前回に引き続き、魅力あふれる調理器具である「ダッチオーブン」のお話となります。前の記事にも書いた通り、もともとのダッチオーブンは鋳鉄を材料に作られました。
※鋳鉄・・・溶かした金属を型に流し込む製法。
現在ではステンレス製や鉄板をプレスしたもの、選択肢は多くありませんがアルミ製など素材は様々です。それぞれにメリット、デメリットはありますが、まずは昔ながらの鋳鉄製ダッチオーブンをご紹介します。
ダッチオーブンの素材
鋳鉄製ダッチオーブン
鋳鉄の特性は何といっても「熱伝導率」が高いこと。鍋全体が温まり、ゆっくりと熱が加わることにより食材の旨味を最大限引き出すことが可能となります。ダッチオーブンを購入して最初にすることは鍋の表面のさび止め剤を空焼きして焼き切り、鍋に油をなじませること。※鉄の保護膜となる被膜を表面全体に形成させるための作業。これらの作業をシーズニングと呼びます。ダッチオーブンで作った料理が鉄臭くてダメだ、と感じている方はシーズニングを行っていない、もしくはシーズニングが不十分である可能性があります。
※現在では予めシーズニングを済ませた製品も多く販売されています。
それではダッチオーブンのシーズニング方法をご紹介します。シーズニングについては、そのやり方、使用する油の種類など、様々な方法が見受けられ、どれが正解なのか迷う方も多いかと思います。要はダッチオーブン表面に保護膜ができればOK。ここではもっともポピュラーな方法をご紹介します。私はこの方法でしかシーズニングをしたことがありませんので、もっと効率的な方法もあるとは思いますがご容赦ください。
シーズニングの手順
初めにダッチオーブンを空焼きして錆止め剤を焼き切ります。煙が出なくなるまで行うことが大事。ご家庭にオーブンがあれば200℃~250℃で一時間ほど熱すればOK!気を付けなければいけないことは、この作業をカセットコンロでは行わないように!輻射熱によりカセットボンベが熱くなり、場合によっては爆発の恐れがあります。※シーズニング済みの製品はこの作業は必要ありませんが、食材がくっつきやすくなった、錆びてしまった時などはこの作業を行うと復活します。
自然に熱が冷めるまでそのままにしておき、その後全体に油を塗布します。布やクッキングシートに油を吸わせてトングなどを使って行いましょう。その後、200℃~250℃のオーブンで再度熱してまた油を塗布する・・・これを3回くらい繰り返せば完成です。油を塗布した後に屑野菜を炒めるといい、と書いている本もありますが、しっかりと油でコーティングできればこの工程は省いてもいいと思っています。
※シーズニングに使用する油の種類は乾性油が良いとされています。乾性油は加熱などの処理をしなくても室温の空気中で完全に固化する性質を持ち、これが鉄の保護膜となるのです。乾性油で一般的にも入手しやすいものとしてはグレープシードオイルが挙げられます。ダッチオーブンメーカーの老舗、LODGE社の製品では大豆油を使用しているとのことですが、そこまでこだわらなくても大丈夫。逆にシーズニングに向かない油はオリーブオイルです。オリーブオイルは不乾性油であり、被膜を作りにくい部類の油とされています。
※料理好きの方にはおなじみの「ル・クルーゼ」や「ストウブ」の鉄鍋も広義で解釈すればダッチオーブンの仲間です。鋳鉄の鍋にエナメル加工を施した製品であり、ダッチオーブンのメリットを生かしつつ、メンテナンス性を高めたものと考えてもいいでしょう。
シーズニングの作業を面倒だと捉えるのか、鍋を育てる第一歩だと捉えるかは人によって異なるとは思いますが、私自身はこの作業は嫌いではありません。すぐに使いたいという方はシーズニング済みの製品を購入しましょう。鋳鉄製ダッチオーブンのデメリットとしては、使用後に水分をしっかり飛ばさないと錆びてしまうこと(使い込むほどに錆は出にくくなります)、鋳物であるため衝撃にやや弱いことなどが挙げられます。また、ヒートショック(急激な温度変化)を与えることも厳禁。熱々の状態で急に水で冷やすと、最悪、割れてしまいますのでご注意を。その他、洗うときに洗剤でこすり過ぎると、せっかくできた保護膜が落ちてしまいますので、お湯とタワシだけで洗うほうが良いかも。保管するときは薄く油を塗るのをお忘れなく。
ステンレス製ダッチオーブン
鋳鉄製は手間がかかるな、と感じる方も多いと思いますが、こういったデメリットを無くしたのがステンレス製のダッチオーブン。ご家庭で使用している鍋と同じようにガシガシ洗っても大丈夫。ガンコなな汚れや焦げ付きを落とす場合は金属タワシを使ってもOK。また、落っことしてもへっちゃらな堅牢性、濡れたままでも錆が発生しにくいメンテナンス性の高さを考えた場合、ステンレスを選択するのもアリ。デメリットは鋳鉄製と比べて値段が張ること。また、熱伝導率が低い為、温度ムラができやすいのも鋳鉄製とは異なるところです。
ステンレス製ダッチオーブン
黒皮鉄板製ダッチオーブン
その他、鉄板をプレスして製造した黒皮鉄板製のダッチオーブンも販売されています。黒皮鉄とは酸化皮膜をまとった鉄のこと。1000℃以上に加熱されて酸化鉄になった黒皮鉄は錆びを防止する効果があり、表面には小さな凹凸がたくさんあるため油なじみがとても良く、調理用の鉄板やフライパン、中華鍋などにも使用されています。熱伝導率も高く、頑丈で油なじみも良いため、愛用している方も多いと思います。値段もステンレス製ほど高額ではないため、鋳鉄製ダッチオーブンよりも優れていると感じる方もいるかもしれませんが、まったく錆びないわけではありません。使用後は鋳鉄製のダッチオーブン同様にしっかりと水気を切って薄く油を塗布することが大事です。
アルミ製ダッチオーブン
ダッチオーブン界では少数派と言えるのがアルミ製ダッチオーブン。あくまでも個人的な感想ですが、アルミ製のメリットは軽いこと以外に思いつきません。キャンプでは「軽さが正義」という考え方もありますが、そもそもアルミ製ダッチオーブンの選択肢自体が少なく、最近ではソロキャンプに向いた6インチ(直径16cm)サイズが販売されているくらいです。アルミ製ダッチオーブンの最大の弱点は、その他の素材のダッチオーブンとは異なり、空焼きは厳禁であることです。最悪、穴が開く可能性もあるためご注意を。位置付けとしては、ダッチオーブンの形状を模した厚手のアルミクッカーという感じでしょうか?このように書くとあまりいい印象が無いように感じるかもしれませんが、6インチのものは二人分のご飯を炊くのにちょうどのサイズ感。蓋も密閉できるため圧力鍋効果も発揮できます。また、内側がフッ素加工されているため、お米のこびりつきはありません。
このように、様々な素材のダッチオーブンが販売されており、どれを選ぶか悩ましいですが、私は昔ながらの鋳鉄製が好みです。使い込んだダッチオーブンの醸し出す味というか雰囲気、単なる調理器具には見い出せない愛着を感じることができるのは鋳鉄製のダッチオーブンだと思っています。デメリットというか、使用上の諸注意もありますが、それを補って余りある優秀さです。なんとも情緒的な理由ですが、使ってみればきっとわかるはず(重いけど・・・)
ダッチオーブンのサイズ
最後にダッチオーブンのサイズについて。一部の国内メーカーを除き、ダッチオーブンは基本的にインチ表記となっています。一般的なダッチオーブンのサイズは5インチ(12.7cm)、8インチ(20.3cm)、10インチ(25.4cm)、12インチ(30.5cm)となっており、ここで示されている数字は鍋の直径となります。5インチはソロ用、もしくは1~2人分の料理を作るのに適したサイズ。どのサイズが良いかは何人分の料理を作るかにもよります。大は小を兼ねる、ということもありますが、キャンプだけではなく、日常でも使用することを考えた場合、8インチか10インチをチョイスするのが無難かと思います。ちなみに私が一番使い勝手がいいと感じるのが10インチ。パンを焼いたり、煮込み料理を作るのに全く不便を感じません。
いかがでしたでしょうか?主にギアとしてのダッチオーブンの魅力をお伝えいたしましたが、最大の魅力はダッチオーブンの汎用性、そしてダッチオーブンで作る料理の美味しさです。こればかりは味わってみなければわかりません。私の拙い文章で表現するよりも、「ダッチオーブン レシピ」で検索すれば、星の数ほどのレシピに出会えるはず。それらに魅力を感じたなら、あとは購入するのみ!
それでは皆様、魅惑的なダッチオーブンの世界へGO!
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